今や誰も知らない人は居ない「青春18きっぷ」。もう15年以上もの歴史を誇る長寿切符ですが、その広告企画にも大きな流れがあったりします。
 ここでは、切符の歴史は横に置いといて、きっぷの広告企画、という面からこのきっぷを眺めてみたいと思います。



☆ちょっと読んでおきたい「コラム」☆


[旅の手帖(弘済出版社) 2001年12月号]

☆「青春18きっぷ」と駅

 駅で何気なく見ている中で、広告に旅心をくすぐられた経験はないだろうか?「青春18きっぷ」はきっとそんな広告のひとつに数えられるはずだ。この広告、近年は「駅」をテーマにしているという。一枚で「物語」を表現する広告の世界で「駅」や「鉄道」はどんな役割をもっているのだろうか? 実際にこの広告作りに携わるディレクターに話を伺い「青春18きっぷ」の世界に踏み込んでみよう。そして、このきっぷであなただけのとっておきの駅を探しに出かけてみませんか?

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 人は「旅行」する人と「旅」をする人と2つに分けることが出来ると思う。列車に乗ると、車窓の向こうにはまるで関心を示さず眠るか、食べるか、話をする人と、すぐ車窓の向こうに広がる景色に視線を預け、飽くことがない人に。青春18きっぷはもちろん後者の「旅」をする人のきっぷである。上辺だけの旅情で誘う旅行商品のあふれるこの時代に、ほんものの旅を売り物にしている稀有な商品である。もちろん、ほんものの旅になるかは本人次第であるが。

 その青春18きっぷのテーマは距離感である。

 旅情とはなんだろうかとたまに考えると、やはり住み慣れたところから遠く離れてしまった距離感だと思う。見るもの聞くもの、いつもと違えば違うほど距離感は生まれ、ときには寂しく旅情を感じてしまう。しかしこの日本では、そんな旅情も距離感もますます感じにくい状況だ。全国チェーンの大型店舗やコンビニなどの進出に限らず、全国の町々に均質な風景が出現しているからだ。新幹線や飛行機、高速道がなかった頃の昔には、今よりも深い旅情があったはずである(芭蕉の頃だったら死ぬかも知れない恐怖と一体の激しい旅情があったはずだ)。そこまでの旅情はいまは望めないけれども、そんな旅情の断片や記憶を駅や線路に探しに出かける旅が僕の青春18きっぷの広告づくりである。

(株)電通 アートディレクター 込山富秀
【編註:文中敬称略】

 いつも駅で見る広告という物は、某かのメッセージを込めて作られています。自分も広告写真&広告制作の世界に身を置いていますのでそりゃそうなのは百も承知なのですが、なかなか制作サイドの声を聞く機会という物は、「コマーシャル・フォト」などの業界雑誌を見ないと分からない物ですし、一般にはそういう雑誌を手に取る人は数が少ないものです。

ちなみに写真を撮っているのは、真島さんですネ。これも本屋で鉄道写真の本を読んでこの前やっと知ったのでした(^^;
(2001.11.19 by Kori)

もくじ(パート分けは特に根拠は無く、縦長過ぎるといけないので適当に割ってあるだけです(笑)


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