〜モノトーンの世界・列車とその光景編〜

深い森の中。遠くからディーゼルエンジンの音が聞こえてきました。
人気の全くない原生林のに人間が存在感を示す瞬間(とき)がやってきました。
やってきたのは、老いぼれた改造DC。北の厳しい大地でその人生を過ごし、
最後の勤めをほとんど手つかずの自然の中で終えようとしていた老兵がやってきました。
時代に取り残され消えゆく運命にあった鉄路と、最後の奉公をしている老兵。
時代の流れとは全く違う異空間がそこにはありました。

しかし異空間というのは、それすなわち時代の日常的光景ではなかったということ。
やがて消えゆく運命というのは否定できない事実だったのでした・・・・





凍てついた鉄路。そしてたった1両の気動車。1日数本の列車と数少ない乗客たち。
車社会がもし来なかったら、こういう光景はいまでも続いていたのかも知れません。
しかし、時代は流れゆく物。道路の発達に伴って、冬には鉄路も、駅舎も、すべて
深い深い雪の中に閉ざされてしまったのでした・・・・・・。





凍てついた鉄路では足周りもこんな有様。雪の固まりを巻いて走っている様な物でした。
さぞかし足取りも夏より重かったことでしょう。老兵キハ53−500には過酷過ぎる
労働だったことでしょう・・・・・・・・
けど乗っている分には、冬は雪があらゆる音の反射をかき消してくれるので
滑るような感じの旅路でした。聞こえるのはカラカラと回るエンジンの音のみ。
タイムスリップした様な駅の光景、原世界の広がる車窓。すべては
過去の物となってしまったのでした・・・・もう、戻らない・・・。





雨の日の北母子里駅。今日の夕方の最終・朱鞠内行きです。
何もない原風景の中を、人が創った時代(とき)の軌跡をたどるように
たった1両の気動車が走っていた光景・・・・・・
何もかもが懐かしい鉄路の「あの日の光景」だったのでした・・・。

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